AGA(エージーエー)は、男性型脱毛症とも呼ばれる症状であり、成長期、退行期、休止期という毛周期を繰り返す過程において成長期が短くなってしまい、休止期に留まる毛包が多くなる事を基盤にして、前頭部から頭頂部にかけての頭髪が軟毛化して短く細くなり、これらの部分の頭髪がなくなってしまうのが最終的な段階です。この症状の原因は、骨や筋肉の発達を促進する男性ホルモンのテストステロンが、還元酵素により変換されて生産されるDHTという物質が、男性ホルモン受容体毛包の毛乳頭細胞のレセプターと結合する事により、細胞増殖を抑制する増殖因子を誘導する作用を行い、成長期が短縮されてしまうという事です。
最終的には、頭頂部が無毛化してしまうので、形態的には円形脱毛症や機械性脱毛症と類似した状態となりますが、原因はあくまでも体内で生産された物質と遺伝的な要因によるものであり、他の脱毛症とは明確に違います。一般的な脱毛症で効果を発揮する血行促進や栄養補給等の成分が配合されている育毛剤だけでは、症状の進行を防止する事は出来ません。これは、DHTが生産されている限り毛母細胞の増殖が抑制された状態が継続するためで、通常であれば3年から5年程度続く成長期の状態が著しく短くなり、十分に成長することなく頭髪は抜け落ちてしまうからであり、発毛促進だけではせっかく生産した頭髪も定着する事は非常に困難となるからです。
また、思春期以降に発症する確率が徐々に高くなっていき、20歳代後半から30歳代にかけて発症するケースが多いという意味では、老化脱毛とも一部共通しており、初期の段階では皮脂の分泌量が増加するために激しい痒みを伴うという部分では薬剤による脱毛とも症状において似ている点もあります。さらに、皮脂の分泌が増加して頭皮環境が悪化するのでフケの増加という点では粃糠(ひこう)性脱毛症と似ており、自分自身で頭髪を抜くトリコチロマニアを併発するケースもあります。しかし、これらの他の脱毛症とAGAの明確に違うのは、既に世界的に効果が確認されている治療薬が開発されており、これを服用する事によって高確率で症状の進行を防止する事が可能という事です。
プロペシアは、5α還元酵素の阻害剤であり、前立腺肥大の治療のために開発された後に使用した人の頭髪の成長が確認された事でAGA治療薬として認可されています。つまり、短縮されていた成長期が長くなったという事であり、DHTの生産が抑制された事により毛周期が正常な状態に回復したという事です。この治療薬の特徴は、頭皮や頭髪に直接的なアプローチを行うのではなく、原因物質の生産に関与している還元酵素の酵素活性を低下させるという内容で、従来の方法とは根本的な部分での差異があります。ただし、良質なランダム化比較試験により効果と安全性においては高い効果がある事が確認されており、実に98パーセントの確率で症状の進行が止まったという結果が報告されています。
脱毛症は、たとえ頭髪が完全になくなってしまう状態にまで症状が進行したとしても生命活動には直接的な影響を及ぼす事はないので、医療機関での治療は健康保険が適用されない自由診療に分類されており、費用は全て実費となります。このために、プロペシアはAGA治療を行っている医療機関で購入する事が出来ますが、クリニックによって価格設定は違っているので、リーズナブルな価格で購入するためには、事前の比較検討を行わなくてはなりません。相場は1カ月で1万円程度ですが、長期的な使用が必要というこの治療薬の性格上、少しでも安い金額で購入する事で経済的な負担を軽くする事につながります。
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